Start mass production of φ 2 inch gallium oxide epitaxial wafer

ϕ 2インチ酸化ガリウムエピタキシャルウエハの量産を開始

株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
株式会社タムラ製作所
国立大学法人東京農工大学
2017年9月12日

ϕ 2インチ酸化ガリウムエピタキシャルウエハの量産を開始
– 低コストパワーデバイス、価格SiCの1/3以下に道 –

図1 ϕ 2インチGa2O3エピタキシャルウエハ

図1 ϕ 2インチGa2O3エピタキシャルウエハ

株式会社ノベルクリスタルテクノロジー注1(所在地:埼玉県狭山市、代表取締役社長:倉又朗人)は、 株式会社タムラ製作所、国立大学法人東京農工大学と共同開発した次世代パワーデバイス用の ϕ 2インチ酸化ガリウムエピタキシャルウエハ(図1参照 以下、Ga2O3エピウエハ*1)を世界で初めて量産します。 これまで販売してきたエピウエハの面積をいっきに13倍までアップします。Ga2O3は、耐圧数万ボルトのパワーデバイスを 実現することが理論的に可能であり、基板製造の低コスト化が出来るため、パワーデバイス用として、省エネルギー社会 の実現に大きく貢献出来るまさに夢の半導体材料です。また、超高輝度LED用基板、紫外線センサ、マイクロ波用デバイス、 シンチレーター、高感度固体撮像デバイス等、その応用は多岐に渡り、これからの未来を大きく切り拓く可能性を有します。 エピウエハのϕ 2インチ化により、実用化に向けた研究開発がさらに活発化し、Ga2O3パワーデバイスをはじめとした様々な応用分野に おける早期の製品化が期待されます。

内容

Ga2O3は、SiCやGaNよりも大きなバンドギャップエネルギー*2を有することから、低消費電力と高耐圧を兼備えた パワーデバイスの実現が期待されており、国内外の企業、公的研究機関、大学の研究者らの注目を集めています。更に、融液法によりバルク単結晶を育成出来ることから、 将来的に、SiCやGaNに比べて、低価格で高品質な基板を市場に提供することが可能です。そのため、汎用電源から、太陽・燃料電池による発電システム用パワーコンディショナー、 電気・燃料自動車や鉄道車両のモータ駆動システム用のコンバーターやインバーター、耐宇宙環境用をはじめとした耐過酷環境用デバイス、将来の電気飛行機、さらには、 送配電系統等、中耐圧から高耐圧領域のパワーデバイス市場において省エネルギー化への貢献が期待されます。

ノベルクリスタルテクノロジーは、2015年10月より、10 mm×15 mmサイズのエピウエハの製造を開始しましたが、ユーザーからのエピウエハの大口径化を求める声が強かったため、 タムラ製作所と東京農工大学と協力しながらϕ 2インチGa2O3エピウエハの開発を進めてきました。

パワーデバイス用Ga2O3エピウエハは、数100 μmの厚みからなる主面(001)面の単結晶Ga2O3基板と 数μ~数10 μmの厚みからなるエピタキシャル膜で構成されています。基板は、EFG法*3により、タムラ製作所が新たに製造技術を開発しました。エピ膜は、 既に、学会、論文等で公表済みのSIP注2(次世代パワーエレクトロニクス、管理法人:NEDO注3)の成果である東京農工大学の HVPE法*4の技術をベースとして、ノベルクリスタルテクノロジーが独自の大型装置を開発し、ϕ 2インチ基板全面への製膜が可能となりました。 それらの技術を組み合わせることにより、図2に示すように、エピ膜厚の均一性16.5%、キャリア密度*5の均一性19.7%のエピウエハの開発に成功しました。

また、ϕ 2インチエピウエハを用いて、ショットキーバリアダイオード*6を作製し(図3参照)、エピウエハ面内における電気特性を評価しました。 図4に順方向と逆方向の電流密度-電圧特性を示します。順方向特性については、エピ膜のキャリア密度と膜厚から推定される特性が得られています。 逆方向につきましても、測定装置の測定下限までリーク電流が抑えられています。面内でほぼ均一な特性が得られていることから、2インチウエハ全面にわたって 高品質なエピ膜が形成されていることを確認できました。本技術内容につきましては、2017年9月13日(水)~15日(金)に、イタリアのパルマ大学で開催される International Workshop on Gallium Oxide and Related Materialsにて発表いたします。

図2 エピ膜厚分布(左図)とキャリア密度分布(右図)の等高線図

図2 エピ膜厚分布(左図)とキャリア密度分布(右図)の等高線図

図3 ショットキー電極付ϕ 2インチGa2O3エピウエハ

図3 ショットキー電極付ϕ 2インチGa2O3エピウエハ

図4 SBDの順方向(左図)と逆方向(右図)の電流密度-電圧特性

図4 SBDの順方向(左図)と逆方向(右図)の電流密度-電圧特性

【今後の展開】

今後は、Ga2O3ワーデバイス開発の更なる進展のため、Ga2O3エピウエハの低コスト化、 大型化、高品質化に取組んで行きます。2018年度には、デバイス量産用ϕ 4インチのエピウエハの製造を開始します。2019年度には、SiCエピウエハの価格を 下回ることを実現し、将来的にはSiCエピウエハの1/3以下の価格でGa2O3エピウエハを提供する予定です。

これからも、Ga2O3ワーデバイスの実用化に尽力すると共に省エネルギー社会への実現、さらには、他の産業分野の発展に貢献していきます。

【用語解説】

※1 エピウエハ
単結晶の半導体ウエハ基板の上に、エピタキシャル膜と呼ばれる厚さ数μmから数10 μm程度の電気特性等の異なる別の単結晶薄膜を形成したもの。

※2 バンドギャップエネルギー
固体内電子の、伝導帯の最も低いエネルギーレベルと価電子帯の最も高いエネルギーレベルの間で、電子が存在できないエネルギー状態。金属ではバンドギャップはゼロであり、絶縁体では大きな値となる。半導体はこの中間にあり、バンドギャップの大きさによりその伝導特性が大きく変化する。

※3  EFG (Edge-defined Film-fed Growth)法
坩堝と坩堝内に配置した幅1 mm未満のスリットが入ったダイを設置し、原料を投入、誘導加熱により融液となった原料は、毛細管現象により、スリットを通ってダイの上部に到達。ダイ上部に種結晶を接触させて単結晶を育成する方法。結晶の形状は、ダイの上部の断面形状に依ってきまる。

※4 HVPE (Halide Vapor Phase Epitaxy)法
反応管内に、薄膜の原料となる金属材料と反応させたハロゲン化物ガスと別の原料ガスを流し、加熱した基板上で化学反応させて半導体膜を製膜する方法。Ga2O3の場合、一塩化ガリウム(GaCl)と酸素(O2,/sub>)を用いる。

※5 キャリア密度
n型半導体を流れる電流の担い手である自由電子の密度。

※6 ショットキーバリアダイオード
金属電極と半導体との接合によって生じる電位障壁を利用したダイオード。低い順方向電圧と、低スイッチング損失を特長とする。

【問い合わせ先】

株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
《研究内容》営業部  TEL:04-2900-0072
《報道関係》上記に同じ
株式会社タムラ製作所
《研究内容》コアテクノロジー本部セミコン開発室  TEL:04-2900-0045
《報道関係》経営管理本部 経営支援グループ  TEL:03-3978-2013
国立大学法人東京農工大学
《研究内容》大学院工学研究院 応用化学部門 教授 熊谷 義直(くまがい よしなお)  TEL:042-388-7469
《報道関係》総務部総務課広報・基金室  TEL:042-367-5930

注1
ノベルクリスタルテクノロジーは、タムラ製作所のカーブアウトベンチャーであり、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の技術移転ベンチャーとしての認定会社です。

注2
内閣府総合科学技術・イノベーション会議が進めている国家プロジェクトである「戦略的イノベーション創造プログラム」の略称。

注3
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

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