Development of next generation power device material, gallium oxide epitaxial wafer, Novell Crystal Technology, Inc. started manufacturing and selling

株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
国立研究開発法人情報通信研究機構
国立大学法人東京農工大学
株式会社タムラ製作所
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
2015年10月21日

次世代パワーデバイス材料、酸化ガリウムエピウエハを開発
(株)ノベルクリスタルテクノロジーが製造・販売を開始

情報通信研究機構(NICT)、東京農工大学、(株)タムラ製作所らの研究チームは、次世代パワーデバイス材料として有望な酸化ガリウムエピウエハ※1の開発に成功しました(図1)。

タムラ製作所からのカーブアウトベンチャーであり、NICT技術移転ベンチャーでもある(株)ノベルクリスタルテクノロジー(埼玉県狭山市 代表取締役社長:倉又朗人)がこの成果を事業化し、2015年10月から、今後成長が見込まれるパワーエレクトロニクスに向け、大学・研究機関・メーカーなどへ供給を開始しました。

なお、本研究開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省エネルギー革新技術開発事業(研究開発期間:平成23~25年度)の支援を受けて実施いたしました。

酸化ガリウムエピウエハの断面構造と写真

図1 酸化ガリウムエピウエハの断面構造と写真

【背景】

酸化ガリウムは、日本発の新しい半導体結晶材料です。バンドギャップ※2が大きく、高品質・大型の単結晶基板を安価に製造できることから、近年パワーデバイス用材料として注目されている窒化ガリウムと炭化ケイ素を凌駕するポテンシャルを持つ、次世代パワーデバイス材料として期待されています。実用化されれば、6,000 Vを超える極めて高い耐圧を有しながら、低損失性を併せ持ったダイオードやトランジスタを実現できる可能性があり、電気自動車、電車の電源や送電系統システムの設計に大きな変革をもたらすことが期待されます。

【内容】

パワーデバイス用エピウエハには、(1)エピ表面の平坦性と(2)低キャリア濃度※3領域での濃度制御の2つが求められます。研究チームは、エピ成膜方法としてオゾンMBE法※4と呼ばれる方法を採用し、結晶面方位、ドーパント※5種、成長温度、原料供給量等の成長パラメータを最適化しました。一例として、図2に、表面平坦性と成長温度の関係、および、キャリア濃度とドーパント原料セル温度の関係を示します。これらにより、パワーデバイス用エピとしての性能を満たす、1nm以下の表面粗さと、1016cm-3台の低キャリア濃度領域での制御が可能となりました。このエピウエハを用いて良好な特性のショットキーバリアダイオード※6やトランジスタを作製できることを確認いたしました。研究チームは、以上の結果を基に、世界初となるパワーデバイス向けの酸化ガリウムエピウエハの開発の成功に至りました。

これらの成果を事業化するため、タムラ製作所と研究者などの個人投資家は共同出資により株式会社ノベルクリスタルテクノロジー(代表取締役社長:倉又朗人)を設立いたしました(別紙参照)。外部の資本を積極的に取り込み、独立した経営陣によるスピーディーな開発、事業化を推進していくため、タムラ製作所からのカーブアウト(技術切り出し)の形態を採用しています。また、ノベルクリスタルテクノロジーはNICT技術移転ベンチャーとして、NICTから知的財産の技術移転を受けて事業を行います。今後成長が見込まれるパワーエレクトロニクスに向け、大学・研究機関・メーカーなどへの供給を行います。

図2 表面粗さと成長温度の関係、および、キャリア濃度とドーパント原料セル温度の関係

図2 表面粗さと成長温度の関係、および、キャリア濃度とドーパント原料セル温度の関係

【今後の展開】

ノベルクリスタルテクノロジーは、大学、研究機関、パワーデバイスメーカーでの研究開発用として、2015年10月から酸化ガリウムエピウエハの製造・販売を開始しました。同社は、本格的な市場の立ち上がり時期として2020年頃を想定しており、2016年度6,000万円、2020年度7億円、2025年度80億円の売上げを目標としています。当面は研究開発向けの製品を出荷しながら、低コスト・大口径ウエハの量産技術の開発を進めることで、酸化ガリウムパワーデバイスの研究開発全体の加速に貢献してまいります。

【用語解説】

※1 エピウエハ
単結晶の半導体ウエハ基板の上に、エピタキシャル膜と呼ばれる厚さ0.数μmから数10μm程度の電気特性等の異なる別の単結晶薄膜を形成したもの。

※2 バンドギャップ
固体内電子の、伝導帯の最も低いエネルギーレベルと価電子帯の最も高いエネルギーレベルの間で、電子が存在できないエネルギー状態。金属ではバンドギャップはゼロであり、絶縁体では大きな値となる。半導体はこの中間にあり、バンドギャップの大きさによりその伝導特性が大きく変化する。

※3 キャリア濃度
半導体中において導電性を担っている担体である電子または正孔の濃度はキャリア濃度と呼ばれる。半導体の電気特性を表わす指標の一つである。

※4 オゾンMBE法
単結晶薄膜形成方法の一つである分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy法)の一種であって、酸素の原料としてオゾンを用いるもの。

※5 ドーパント
半導体の電気特性を制御するために添加する不純物元素。

※6 ショットキーバリアダイオード
半導体に金属を接触させたショットキー接合の整流性を利用したダイオード。パワー半導体として用いた場合、スイッチング損失が小さいという利点がある。

【問い合わせ先】

  • 株式会社ノベルクリスタルテクノロジー  TEL:04-2900-0072
  • 国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部  TEL:042-327-6923
  • 国立大学法人東京農工大学 広報・基金室  TEL:042-367-5164
  • 株式会社タムラ製作所 経営支援・IRグループ  TEL:03-3978-2413
  • 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 広報部 TEL:044-520-5151
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